60歳未満で皮膚カロテノイドが高い群は、アルツハイマー病関連の血液指標が良好 カゴメ・弘前大学らが「ベジチェック®」で解析

手のひらをかざすだけで、日頃の野菜摂取状況の目安がわかる推定野菜摂取量測定器「ベジチェック®」。この機器で測定した皮膚カロテノイドレベルと、アルツハイマー病に関連する血液指標との関係について、新たな研究成果がまとまりました。カゴメ株式会社と弘前大学が、臨床検査機器・試薬の開発・製造・販売を手がけるシスメックス株式会社との共同研究で解析を行い、60歳未満の健診参加者において、皮膚カロテノイドレベルが高い群では血中アミロイドβ42/40が良好であることを示しました。
解析には、弘前大学COI-NEXT拠点が有する岩木健康増進プロジェクトの健康ビッグデータが活用されています。岩木健康増進プロジェクトは、弘前大学が青森県弘前市岩木地区で2005年から継続して実施している大規模合同健康調査で、約3,000項目という膨大な健診項目を設けているのが特徴です。研究成果は、2026年10月1日に国際学術雑誌「Scientific Reports」に掲載されました。

なぜ「血液」と「野菜の色素」に注目したのか
超高齢化社会では、認知症は個人だけでなく社会全体で向き合うべき差し迫った課題とされています。その主要な原因の一つがアルツハイマー病で、早期診断や適切な介入が重要とされています。脳内の病理を評価する方法としてはアミロイドPET検査や脳脊髄液検査などがありますが、検査へのアクセスや身体的負担、費用といった課題があるため、近年はより負担の少ない血液バイオマーカーへの関心が高まっています。
アルツハイマー型認知症では、発症の数十年前からアミロイドβやタウといった物質が脳内に蓄積し、それに伴う変化が血液中にも反映されることが分かってきました。なかでも血中アミロイドβ42/40は、最も早くから変化する血液指標の1つと考えられています。この比率は一般に、低いほど脳内にアミロイドβが蓄積している可能性が高く、高いほど蓄積が少ない可能性を示すとされています。ただし、この指標のみでアルツハイマー病の診断や将来の発症を判断するものではありません。
一方のカロテノイドは、野菜(特に緑黄色野菜)や果物に主に含まれる色素成分です。抗酸化機能を持ち、これまでの研究で認知症の予防に繋がることが示唆されています。代表的なものには次のような成分があります。
- トマト・スイカに多く含まれるリコピン
- にんじんに多く含まれるβ-カロテン
- 葉物野菜に多く含まれるルテイン
カロテノイドは摂取すると体内に吸収され、皮膚にも蓄積することがわかっています。とはいえ、自分の野菜摂取量や体内のカロテノイド量を正確に把握するのは容易ではありません。ベジチェック®は、手のひらを専用の機器に約30秒程度かざすだけで皮膚カロテノイドレベルを推定でき、日頃の野菜摂取状況を簡便に把握できる機器です。なお、ベジチェック®は医療機器ではなく、表示値はあくまで目安となります。
770名の健診データを年代別に解析
解析の対象となったのは、2024年岩木健康増進プロジェクト健診の参加者770名です。体内のカロテノイド量はベジチェック®で測定した皮膚カロテノイドレベルで評価し、アルツハイマー病に関連する血液バイオマーカーは、血中アミロイドβ42/40をはじめとする5つの指標で評価しました。皮膚カロテノイドレベルを四分位に分けたうえで、年齢、性別、教育歴、喫煙・飲酒歴、社会的・精神的健康度などの要因で調整し、重回帰分析で各指標との関連を調べています。加齢に応じてアルツハイマー病理指標の進行が加速することを考慮し、60歳未満とそれ以上に分けて解析が行われました。
高値群と低値群に「約4.5~7年分」に相当する差
解析対象者の平均年齢は50.0歳で、60歳未満の集団に絞ると43.8歳でした。60歳未満の集団では、皮膚カロテノイドレベルの低値群(第1四分位、中央値4.4)と比べて、高値群(第4四分位、中央値6.8)のほうが、血中アミロイドβ42/40が統計学的に有意に良好であることが明らかになりました。さらに、年齢と血中アミロイドβ42/40の関連を皮膚カロテノイドレベル別に可視化したところ、高値群と低値群の間には、年齢に伴う約4.5~7年分の変化に相当する差が認められています。
食生活と将来の認知症をつなぐ手がかりに
今回の研究は、日常の食生活を反映する皮膚カロテノイドレベルが、比較的若い世代から早期血液指標と関係している可能性を示すものです。食習慣とアルツハイマー病関連病理との関係を理解するための基礎的知見として、食生活と将来の認知症との関係を解明する新たな手がかりになることが期待されています。今後は長期的な追跡研究などを通じて両者の関係をさらに検証し、将来の認知症予防に役立つ知見につなげていくことが期待されます。
- 論文名:Skin carotenoid levels are associated with blood amyloid-beta 42/40 ratios in healthy individuals under 60 years of age
- 掲載誌:Scientific Reports
- DOI:10.1038/s41598-026-69139-5
出典:カゴメ株式会社


