高齢者施設における「推し活」が、利用者と職員双方の「生きがい」にもたらす好影響の可能性

サービスの概要と研究の新しい点
どのようなサービス・活動か
「Be supporters!」は、高齢者施設の高齢者や認知症の方々が、地元のJリーグクラブを応援することで、「支えられる」側から「支える」側になることを目指す活動です。サントリーウエルネス(株)とJリーグが共同で推進しており、「いくつになってもワクワクしたい、すべての人へ」をコンセプトに、2020年12月から全国約250施設、延べ約1万5千人(2025年末時点)が参加しています。
今回の研究の新しい点
ウェルビーイングに関わる研究において、高齢者施設の要介護の高齢者による「応援活動」を対象としたものは珍しいとされています(2026年8月時点の調査では、関連する学術文献は確認されていないとされています)。
今回の研究は、2024年11月に発表された「Be supporters!」に参加する高齢者を対象にした研究に続く第2弾です。特に、高齢者に小型無線端末ビーコンを装着して位置情報を取得し、客観的な行動データを収集・解析した点が新しい取り組みです。これにより、活動が高齢者の「生きがい」に生まれる要因や、施設職員にもたらす影響が明らかにされています。
対象となる方
要介護状態にある高齢者施設の高齢者、および高齢者施設に勤務する職員です。
※「要介護状態」については、厚生労働省のホームページで詳細が説明されています。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/nintei/gaiyo4.html
費用・提供エリア・開始時期
本プレスリリースに活動への参加費用に関する記載はありません。活動は全国約250施設(2025年末時点)で展開されており、2020年12月に開始されています。今回の研究成果は2026年9月14日に発表されました。
申込・問い合わせ方法
活動の詳細や参加に関する情報は、「Be supporters!」公式サイトで確認できます。
研究の背景と方法
「Be supporters!」の活動開始以来、参加する施設職員からは、応援する選手ができてから周囲との交流が増えたり、スタジアム観戦のためにリハビリに励んだりするなど、高齢者にポジティブな変化が生まれているという声が寄せられていました。
こうした変化を科学的に検証するため、2023年より、参加高齢者や施設職員を対象に質問票やヒアリング調査を通じて研究が進められてきました。第1弾の研究では、参加高齢者の「推し活度」と「生きがい」が連動し、人とのつながりが幸福度に大きく影響する可能性が報告されています。
今回の第2弾の研究では、質問票やヒアリングに加え、高齢者にビーコンを装着してもらい、客観的な行動データも収集・解析することで、高齢者の「生きがい」が生まれる要因や、施設職員にもたらす影響を明らかにしました。
研究対象と評価項目
研究は観察研究として実施され、大阪府八尾市の高齢者施設3施設における、Jリーグの試合観戦に参加している高齢者19名(82歳~101歳)と施設職員20名が対象となりました。高齢者16名にはビーコンが装着されました。
高齢者に対する質問票は11項目で構成され、活動頻度、推し活度、身体状況(バーセル・インデックス、意欲の指標)、心理的指標(生きがい意識尺度、会話、集団行動)、施設での生活に関する指標(身だしなみ、リズム、自身の役割)が評価されました。

施設職員に対する質問票は8項目で構成され、活動頻度、幸福感(協調的幸福感、生きがい意識尺度)、仕事に関する項目(達成感、成長、意義)、職場に関する項目(人間関係、コミュニケーション頻度)が評価されました。

研究結果
1. 活動参加頻度と高齢者の「生きがい」の関連性
高齢者に対する質問票の解析結果から、活動への参加頻度が増えるほど、「身だしなみ(ユニフォームで自身を着飾る等)」や周囲との「会話」が増えるといった変化が起き、それが「生きがい」につながっていることが分かりました。また、活動への参加頻度が増えることで、活動日や曜日を意識した「リズム」が生まれ、周囲と一緒に楽しもうとする気持ちが高まり、孤独感の緩和につながることも確認されました。
この研究では、「生きがい」が身体状態(バーセル・インデックス、意欲の指標)とは直接的な関連が認められませんでした。このことは、「Be supporters!」が、要介護の高齢者の身体状態に関わらず「生きがい」に寄与する可能性を示唆しています。

2. 活動実施日の共用部滞在時間の増加
高齢者に装着されたビーコンを用いた客観的なデータ解析により、「Be supporters!」の実施日は、ボーリングやカラオケなどの通常のレクリエーション実施日と比較して、高齢者が施設共用部で過ごす時間が有意に長いことが確認されました。これは、「Be supporters!」が、周囲と共通の応援対象を持つ活動であるため、人との関係性が生まれ、その場で長く過ごす動機となっている可能性が考えられます。

3. 施設職員の「生きがい」への好影響
施設職員への質問票の解析結果から、活動への参加頻度の高い職員ほど、「生きがい意識尺度」や「協調的幸福感」(周囲の人との調和や安定した関係性の中で感じる幸福感)が高いことが確認されました。この結果は、活動に積極的に関わる職員が「生きがい」を感じやすい可能性を示唆しています。

まとめと今後の展望
「Be supporters!」は、参加する高齢者の身体状態に関わらず、人との交流機会を増やし、高齢者の「生きがい」に寄与する可能性が示されました。また、共通の応援対象を持つことで周囲との関係性が生まれ、滞在時間が長くなる可能性も示唆されています。さらに、高齢者だけでなく、参加する施設職員の「生きがい」や「協調的幸福感」とも関連することが示されました。
これらの研究結果から、「Be supporters!」は、サッカーを応援するというシンプルな活動でありながら、高齢者施設全体における「生きがい」を生み出す一つの方法となり得ると考えられます。
サントリーウエルネス(株)は、「人生100年時代における『シニアステージ』の『豊かな生活文化』を提案していく」というミッションのもと、健康寿命だけでなく、幸せを感じる期間である「幸福寿命」も重視し、いくつになっても自分らしく輝いて生きることの大切さを発信していく方針です。
生命科学研究所は、今後も「Be supporters!」に関する研究を継続し、高齢者や周囲にもたらす影響を検証していく予定です。研究結果は、より良い活動の実現や、人の幸福についての理解を深めるために活用され、人々のウェルビーイングに貢献することを目指していくことでしょう。


