本文へスキップ

「心肺蘇生はしないで」の希望が救急現場で叶わない現状が明らかに—岡山大学の全国調査で浮き彫りになった課題—

「心肺蘇生はしないで」の希望が救急現場で叶わない現状が明らかに—岡山大学の全国調査で浮き彫りになった課題—

今回の発表内容

岡山大学医学部の田邉綾客員研究員らの研究グループが、全国791の消防本部とメディカルコントロール協議会を対象に実施した調査結果が、2026年9月13日に発表されました。この調査は、救急隊が心肺蘇生を中止できる「手順」の整備状況と、その実際の運用状況を全国規模で初めて検証したものです。

何が新しいか

今回の調査では、以下の点が新たに判明しました。

  • 「心肺蘇生を望まない」という意思を示していた患者3,308件のうち、約7割にあたる2,352件が、心肺蘇生を受けながら病院へ搬送されていました。

  • 救急隊が現場で心肺蘇生を中止できる「手順」を持つ消防本部は、回答した561本部中265本部(47%)にとどまりました。

  • 「手順」を持つ消防本部でも、その半数(52%)は1年間に一度も手順を使用しておらず、「ルールを作る」ことと「実際に使う」ことの間に大きな隔たりがあることが示されました。

対象となる方

この調査結果は、がんの終末期や老衰などで人生の最終段階を迎えた方、そしてそのご家族にとって重要な情報です。また、救急医療に携わる医療従事者、消防職員、介護施設関係者など、終末期ケアに関わるすべての方々に関わる課題を提示しています。

費用

今回の発表は研究調査の結果であり、特定のサービスや製品に関するものではないため、費用は発生しません。

提供エリア

調査は全国の消防本部とメディカルコントロール協議会を対象としており、示された課題は日本全国の救急医療現場に共通するものです。

開始時期

本研究成果は2026年9月1日、国際医学誌『Resuscitation Plus』にオンライン掲載されました。プレスリリースは2026年9月13日に配信されています。

申込や問い合わせの方法

本研究に関する詳細な情報については、岡山大学のウェブサイトをご確認ください。

個別の終末期医療における意思決定や、心肺蘇生に関するご自身の希望を伝える方法については、詳細はお住まいの自治体や専門の相談窓口、ケアマネジャーにご確認ください。

調査の背景と目的

人生の最終段階において、心肺蘇生を受けないことを本人や家族があらかじめ希望しているケースがあります。しかし、実際に心停止が発生し119番通報された場合、救急隊は原則として心肺蘇生を継続しながら病院へ搬送します。これは、救急現場で本人の意思を確認し、心肺蘇生を中止するための全国共通の仕組みが十分に整備されていないためです。

岡山大学の研究グループは、この現状を明らかにし、本人の「最期の願い」を尊重できる社会の実現に向けた課題を特定することを目的に、今回の全国調査を実施しました。

見えてきた二つの課題

調査結果からは、「ルールがない」ことに加え、「ルールがあっても現場で使われていない」という二つの大きな課題が浮き彫りになりました。

心肺蘇生を中止する手順の有無による最期の変化を示すフローチャート

この状況を改善し、本人の意思に沿った穏やかな最期を支えるためには、単にルールを作るだけでなく、救急隊、医師、介護施設、そして家族が迷わず使えるような具体的な仕組みを構築していくことが求められます。

研究者からのメッセージ

眼鏡をかけた笑顔の男性(田邉綾客員研究員)

田邉綾客員研究員は、心肺蘇生が救命に有効な治療である一方で、体力の落ちた高齢の方には身体への負担が大きい処置であると述べています。「心肺蘇生を望まない」という意思は、その方の最期の願いであり、すべての方に一律に心肺蘇生を行うのではなく、その願いを受け止め、穏やかな最期を支えることも救急医療の大切な役割であると考えています。

ご家族の「もしものとき」にどうするか、元気なうちに話し合っておくことが、本人の願いを叶えるための第一歩となるでしょう。

論文情報

本研究の詳細は、以下の国際医学誌に掲載されています。

  • 論 文 名: Implementation gap in prehospital termination-of-resuscitation policies for out-of-hospital cardiac arrest with do-not-attempt-cardiopulmonary-resuscitation wishes in Japan: a nationwide survey

  • 掲 載 誌: Resuscitation Plus

  • 著  者: Ryo Tanabe, Takashi Hongo, Tsuyoshi Nojima, Hiromichi Naito, Atsunori Nakao, Tetsuya Yumoto

  • D O I: https://doi.org/10.1016/j.resplu.2026.101474

関連情報